奇跡のリンゴと目的

奇跡のリンゴが上映中。

リンゴはとてもデリケートなくだもので、年に何度も農薬や肥料をやり、気の遠くなるほどの手間をかけてやらないと絶対に実らないと言われています。この映画は壮絶な辛苦の果てに、無農薬栽培で甘くて美味しい“奇跡のリンゴ”を生み出したある家族の物語です。
一方、農薬は正しく使えば消費者に対して残留農薬等での悪影響はない。
奇跡のリンゴの主人公木村さんは、農薬散布で妻がかぶれを起こすということで、無農薬栽培に挑戦した。
たしかに農薬によってはかぶれを起こしやすいものがある。農薬を散布する生産者は、当然ながら農薬を浴びやすく、皮膚に接触すればかぶれやすい。だから、かぶれやすい農薬を散布するときには、不浸透性の手袋や防除衣、保護眼鏡を着用しなければならない。どうしてもかぶれるのならば、原因となっている農薬を別なものに変えたほうが良い。
だから残留農薬が危険ということではない。
つまり、木村さんの無農薬栽培の目的は、妻を農薬暴露による健康被害から守るため、ということになる。
であれば、無農薬栽培以外に方法はなかったのだろうか?
かぶれの原因となる農薬を変える方が手っ取り早い。
もし、化学物質過敏症でどの農薬でもかぶれる、あるいは農薬製剤に含まれる界面活性剤がかぶれの原因ということであれば、農薬散布作業は無理だろう。別な人を雇うか、一人でスピードスプレーヤーで散布するか。
死ぬほど追い詰められてまで、無農薬栽培にこだわる必要はあるのだろうか?
結局、酢を散布したり、わさびを塗ったりしているわけで、酢でもかぶれる可能性はあるけど、大丈夫だったのだろうか?
科学的に残留農薬に悪影響が無いとしても、価値観の違いから、無農薬のものを食べたいという人もいるだろう。その人達のために無農薬栽培のりんごを提供するのは、ビジネスとしてありだろう。科学とは関係がない。
私が何を言いたいのかというと、目的と解決策が合っていないということ。
妻の健康被害を守るためという目的が、いつの間にか、その解決策の一つにすぎない「無農薬栽培」そのものに変わってしまっている。手段が目的に変わってしまった。
結果的には、妻を健康被害から守れたし、ビジネスとしても成功したわけだが。

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