前に、日本の農業就業者の平均年齢が66歳となり、農業就業人口がどんどん減っているという話を書いた。
この先、日本の農業がどうなるのか、どうしたらよいのか、大変気になる。
まあ、職業柄、無関心では済まない(私の職業については謎にしておく)。
ところで、日本の農業は、世界的に見てどのような位置にあるのだろうか?
最近、「食料自給率の罠」(川島博之)という本を読んだが、とても理路整然と書かれており、客観的な分析がされている。
輸出額と輸入額を見ればその国の農業の強さが分かるだろうということで、FAOの2007年のデータでは、日本の輸出額は22億7344万ドル、輸入額は460億4227万ドル、輸出額から輸入額を引いた純輸出額は-437億6883万ドルとなり、主要10か国の中で最低である。輸出が少なすぎる。日本と同様に土地の狭い島国のイギリスでも輸出額は228億7735万ドル(日本の10倍)だ。
純輸出額1位はアメリカではない。なんと、オランダの279億7807万ドルだ。
日本は土地が狭いので、土地の広いアメリカに比べて農業生産に不利なことは明らかだが、オランダは日本よりも土地が狭い。農地面積は日本が465万haで、オランダは109万haなので、オランダは日本の1/4以下。ちなみにアメリカは1億7316万haなので、日本の37倍!
こう見ると、オランダに学べば、日本も農業を強くすることは不可能ではないといえる。
では、どうすればよいのか、ということだが、土地がネックになるわけで、狭い土地でも高収益の得られる農業にシフトすれば良いということになる。
オランダといえば花きだろう。花は高い。次が野菜、果樹だろう。畜産も、鶏や豚なら広い土地が要らない。
穀物は安いし、土地が必要である。
ということは、土地の狭い日本で、穀物の生産を上げることにこだわるのは、ビジネス的に見れば賢明ではないと言える。
実際、オランダの穀物自給率は14%であり、日本の32%の半分以下である。
日本の野菜や果樹は芸術品のようである。台湾では日本のリンゴは人気があるし、中国の富裕層に売り込めば輸出産業になるのではないだろうか?
穀物はとにかく安い!
米の日本の価格は2007年で1848ドル/トン。アメリカだと200ドル/トン前後。(米の話でアメリカが出てくるとややこしい)
日本の平均的な1haの農家を想定すると、1haで5トン採れるとして、日本の価格相場で90万円程度の売り上げにしかならず、これでは生活は成り立たない。
アメリカの相場だと15万円程度の売り上げ。
全く勝負にならない。
かといって、日本から稲作をなくして、すべて野菜、果樹、鶏、豚にしようというのは極論すぎる。
川島氏は稲作は現状維持しようといっているが、そのあたりは歴史背景から考察しており、本書を読んでほしい。
食料自給率を上げようとすれば、穀物生産を高めなければならないが、日本では、そもそも無理な話である。
農地が狭いのに人口が多いからだ。3000万人くらいであれば自給率は100%にできるだろうが。
そもそもが、食料自給率を100%にしなければならないのかということだが、食料安保、すなわち、輸入が止まってしまうということがあるのか、ということが重要だ。
異常気象により、ある国の生産量が落ち込んで、輸出に回らないことがあるかもしれない。
けど、複数の国から輸入するわけだし、落ち込んだとしても全く輸出できないということにはならない。どの国も一斉に生産量が落ちるということがあるとすれば、地球的にかなりやばい状況である。こういうことが起こる可能性はゼロではないが、通常自給率100%だったとしても、その時はそれもやばいはずだ。
カロリーメイトを備蓄するか・・・。
というよりも、前述の通り日本の人口と農地面積ではそもそも無理な話で、他国と貿易するしか生存できない。
要するに、他国と仲良くしなければならない。
戦争という事態、例えばアメリカと戦争になれば、アメリカが「もう小麦を売らねぇからな!」というかもしれない。
でも、アメリカにとって日本はお得意様なわけで、日本に小麦を売らなければ損するわけだ。
日本はアメリカと戦争したくないし、アメリカも日本と戦争したくないだろう。
貿易が活発になるということは、戦争しにくくなるということだ。
駄々っ子の北朝鮮が無茶なことをしている。
これに対する制裁として、日本は、朝鮮学校の無償化をしない、くらいしかカードがない。
無償化しようが、しまいが、金額的にはしれている。
この程度の付き合いという状況は危険である。戦争できる状態なわけだ。