参院選が公示。投票日は7月20日。
各党の公約を比較すると、れいわ新選組しかないと思っている。
- 消費税はさっさと廃止
- 今すぐつなぎの現金10万円
- 税金は、大金持ちから取れ!
この3つが掲げられた。
つまり、積極財政と、その財源として法人税の引き上げとその累進課税、所得税の累進強化、金融所得課税の優遇税制の見直しを行うことが挙げられている。
今までは「国債発行でお金を刷れ」が前面に掲げられていたが、インフレとなってきた今の局面では、国債発行だけでなく、法人税の引き上げ等の割合を増やした方が良いという判断のようだ。
国債発行と言うと「赤字国債」を心配する人がいるが、借金しているのは国であって、国民ではない。赤字分は国民の黒字になっているので、国民が返さなければならない借金ではない。むしろ、返されたら国民の黒字が減るということ。赤字の利息は新たな国債発行をすればよく、赤字額は単にこれまでに刷ってきた円を示しているに過ぎない。
税金のみが財源ではなく、税は富の再分配、通貨の量の調整、政策の方向性の動機を与えるなどの役割を果たすものである。
ということなのだが、国債発行を前面に押し出すよりも、「税金は、大金持ちから取れ!」を押し出した方が分かりやすい。
税金が政策の方向性の動機を与えるとすれば、消費税は消費を抑える方向性に働く。景気が悪い時に消費を抑えてどうするのか?政策としてはアホとしか思えない。
また、消費税を払うのは企業である。利益に関わらず払わなければならない。ならば利益を確保するために、経費を抑える方向性に働く。つまり、人件費を抑えようとか、派遣労働の契約に切り替えて「仕入れ」として売り上げ分の消費税から差し引く分の消費税を増やし、納める消費税を少なくしたくなる(※)。つまり、派遣労働の契約を増やす動機が働き、国民の賃金は下がる。
※:納める消費税=売上時に受け取った消費税-仕入れ時に支払った消費税
派遣労働の契約は仕入れとして計上される。自社の社員の人件費は「仕入れ」には計上されない。
一方、消費税増税の代わりに法人税を下げてきた。法人税は利益に対してかかるので、利益が少なければ納める法人税が少なくなる。企業は利益が出た時に、法人税を払うよりも賃金を増やして利益を抑え、法人税を下げようとする。
消費を活性化させ、賃金を増やして日本経済を再生させるには、消費税を廃止し、その代わりに法人税を増やした方が良いといえる。
他党の公約と比較してみる。
vs自由民主党
- 強い経済
- 豊かな暮らし
- 揺るぎない日本
1の「強い経済」は、具体的には「GDP 1000兆円」「国民の所得を5割増し」。手段としては「成長分野に大胆に投資」とかいろいろ書かれているが、数字の根拠が分からない。それができるのならば、今までにやっておけよ、という話。
2の「豊かな暮らし」は、具体的には「強力な物価対策と持続的な賃上げを実現!」。物価対策として4万円または2万円の給付や、公定価格(医療・介護など)の引上げで賃上げを目指すという。しかし、給付額が少ないし、賃上げが出来るなら今までにやっておけよ。そもそも賃上げは企業がやることなので、その動機付けを政策としてどうするのかという話だ。号令だけでは変わらない。
3の「揺るぎない日本」は、「世界の中心で輝く国に!」ということだが、抽象的。当たり前な政策が並べられ、最後には憲法改正の主張となっている。どうしたいのか結局よくわからない。
まとめると、これまでにやっておけよ、という内容で、これまでに経済を衰退させてきた反省がない。また、手段が具体的に煮詰められていない内容。
消費税については引き下げる気はない。
vs立憲民主党
- 食品消費税0%
- 2万円給付
- ガソリン暫定税率の廃止
食品だけでも消費税0%はありがたいが、飲食店は損をする可能性が高い。
前述のとおり、
納める消費税=売上時に受け取った消費税-仕入れ時に支払った消費税
なので、仕入れ(食材)の消費税が0%になれば差し引く消費税が0になるので、売上時に受け取った消費税をそのままおさめなければならない。食材が消費税分安くなれば問題ないが、食品の価格は需要と供給の関係で決まりやすいので、消費税分まるまるは値下げされないだろう。
税率は一律の方が良い。インボイスも必要なくなるし。
れいわ新選組は食料品の消費税ゼロに反対している。
立憲民主党は「税金の使い方を徹底的に透明化し、ムダづかいをなくす」と主張しているように、政府はできるだけお金を出さないことを目指している(緊縮財政)。これでは公務員はギリギリの予算でやりくりしなければならず、教職員のブラック労働などはなかなか解消されない。
一見ムダに見えても、余裕がないと臨機応変に対応できない。
政府が積極的にお金を使っていくことで、経済発展の起爆剤にする必要があると思う。
vs公明党
- 所得税控除の引き上げ
- 2万円または4万円の給付
- ガソリンの暫定税率廃止
- スマート農業でコメの増産
- 農家の収入保険の拡充
- 小中学校の学校給食の無償化
- 高校、大学の授業料の無償化
- 奨学金返還額の減額
- 価格転嫁等による取引適正化の徹底による賃上げ
などなど。(←大きなお世話かもしれないが、Webサイトが見にくい)
すぐにやってほしいことが並べられている。
しかし、農業政策に関しては、スマート農業を導入すれば簡単に増産できるというものではないし、初期コストもかかる。収入保険も保険料を支払う必要があるわけで、農家の自助努力にゆだねられており、これでは若い人が農業に従事しようという気になれないだろう。農業は場所によるハンディがあるし、気象による不作はどうしようもない。安定収入が欲しいところ。
対して、れいわ新選組は「農林水産業の所得補償や就農者支援を充実させることで、消費者が手頃な価格で食品を入手できるようにする(戸別所得補償・直接支払い)」を主張している。安定した収入が得られるならば農業に従事したいと思えるだろう。
vs日本維新の会
今回の参院選では、これが大きく掲げられている。
社会保険料を下げてもらえるならありがたいが、下げた分を政府が穴埋めするわけではなく、社会保障政策の中でやりくりしようというもの。
ということは、結局は社会保障サービスがトータルでは減少する。
今健康な人は良いかもしれないが、弱者を切り捨てる政策。今健康な人も、いずれ病気になれば切り捨てられる。
このやりくりとして例えば、OTC類似薬の保険適用除外が挙げられている。
OTC類似薬とは、医師の処方が必要で、現在は保険適用となっている薬のうち、市販薬と成分と効果が似ているもの。例えばアレルギー薬のフェキソフェナジン(アレグラ)や咳止め薬のカルボシステイン(ムコダイン)など。
日本医師会はこの保険適用除外に反対している。
アレルギーを持っている人には経済的な負担になるし、適切な治療が受けられなくなる。
OTC類似薬の保険適用除外についての各党の賛否は、次のとおり。
賛成:自民党・公明党・日本維新の会、国民民主党、参政党
反対:日本共産党、社民党、れいわ新選組
他には、病床の削減、高齢者の医療費窓口負担を1割から3割に見直す、としている。
まさに弱者切り捨ての政策。
vs国民民主党
公約は、「減税や社会保険料の軽減、生活費の引き下げで手取りを増やす」。
減税に関してはれいわ新選組と似たような政策。とはいえ、れいわ新選組の方がさらに強く減税しようという主張。
社会保険料の軽減については、後期高齢者医療制度への公費投入増も主張しており、軽減した分の一部は公費投入で穴埋めしようということなので、日本維新の会よりは良い。
れいわ新選組は、
- 後期高齢者医療制度は廃止し、全額国費負担
- 介護保険の国負担割合を50%以上に引き上げ、保険料負担を軽減
など、国費を大胆に投入する、としている。
他の違いとしては、原子力発電所についての考え方。
国民民主党は、「厳格な安全基準を満たした原子力発電所の稼働、リプレース・新増設推進」としていて、原子力発電所を容認している。
一方、れいわ新選組は原子力発電所は即時廃止としている。
地震や有事の際の標的になれば全国民を危険にさらされるからだ。
他にも、国民民主党は「防衛力の強化」を主張しているが、れいわ新選組は「平和外交」と「米軍依存の見直し」を主張している。れいわ新選組のこの主張は、比例区から立候補している伊勢崎賢治氏(元国際連合東ティモール暫定行政機構上級民政官)の考え方が反映されている。
vs日本共産党
消費税廃止(まずは5%に)はれいわ新選組と同じ主張だが、その財源として「赤字国債=借金にたよることはできません」とれいわ新選組を批判している。
れいわ新選組は財源は税だけではなく、通貨発行でも可能という考え方。
日本共産党は法人税と富裕層への課税で賄うという考え方。
最初に書いたように、れいわ新選組は法人税と富裕層への課税についても主張しているので、この点は同じなのだが、れいわ新選組はこれにプラスして通貨発行を主張している。通貨発行を財源と考えるのか、これが根本的に異なる。最初に書いたように、通貨発行で全く問題ない。政策的にはかなり共通しているので、通貨発行については日本共産党には気付いてほしいところ。
vs参政党
消費税廃止や、積極財政、財政収支の黒字化目標の見直しはれいわ新選組と共通するところ。
しかし、参政党は「日本人ファースト」を掲げているように、排外主義、ナショナリズム、日本の伝統的(というか、明治時代の)価値観を主張している。
「一馬力でしっかり稼げる」「専業主婦」「出産を担う女性を尊重」というように、女性は社会進出せずに子育てに専念すべきだという考え方。
参政党の憲法草案は、天皇主権と読み取れる内容となっている。天皇はこれを望んでいるのだろうか?
スタンスがれいわ新選組とは根本的に異なるので、比較対象にならない。
vs社民党
2022年の参議院選挙にれいわ新選組から立候補し当選した水道橋博士(翌年に鬱病で辞職)を応援していたラサール石井氏が、れいわ新選組ではなく社民党から立候補したのには驚いた。
それほど政策は似ている。公約はこれ。
似ているとはいえ、通貨発行が財源となることについては触れていない。
れいわ新選組ほどは政策を煮詰めていないように思う。
政策というよりも、右か左かが対立軸だった時代に、社会民主主義を主張していたのが社民党で、社会主義・共産主義を主張していたのが日本共産党、という流れ。れいわ新選組は右か左かの対立軸というよりも、積極財政と緊縮財政の対立軸での積極財政派である。結果的には似ているようだが、歴史的に異なる。通貨発行が財源かどうかの観点がないのは、それが対立軸でなかった時代の政党だからだろう。
食料品消費税ゼロには賛成している。
支持母体となる労働組合は日本労働組合総連合会(連合)だが、現在の連合は主に立憲民主党と国民民主党を支持している。